2019年9月16日月曜日

保養とごはん②

「保養とごはん①」はこちら⇩





▪️スウェーデンとベラルーシの市民科学

僕が素敵だな、こんな風にやりたいなと思っているのは、この本『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』のようなことです。



スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』
防衛研究所+農業庁+スウェーデン農業大学+食品庁+放射線安全庁共同プロジェクト訳:高見幸子・佐藤吉宗
出版:合同出版
(21012年2月)


この本はスウェーデン政府、研究所、大学が共同で研究してきた内容の記録です。

スウェーデンの防衛研究所、農業庁、農業大学、食品庁、放射線安全庁が共同で「チェルノブイリ原発事故のとき、自分たちは超あわててパニクったけど、20年粘り強く向き合ってきて、わかったことがあるから書くね」といって出してくれた本なのです。

これが今、僕たちに必要なスタンスだと思っています。

福島第一原発事故からまだ10年も経っていません。

事故の原因についてすら、あらゆる事故調査委員会が「津波が原因」と言っていますが、本当は「地震ですでに原子炉が破損し、メルトダウンに向かっていた」という事実もわかってきています。

しかし政府や電力会社や自治体は「津波対策」をしている。

この例が象徴的なように、日本社会はまだ「対策を講じる」スタートラインに立つための「正確な情報の共有」すら、納得できるレベルになっていないのが現実ではないでしょうか。

そのような状況の中で、何がいいとか悪いとか、何が正しいとか間違っているとか、結論探しの議論ばかりしていてもしかたがありません。

現場に立ったり、実践や研究をコツコツと積み重ねている人達にスポットがあたっていません。

でも実際は今、結論ではなく、現場が大事です。

研究、検査、測定、保養活動、移住支援、医療活動、やるだけやって、後でいろいろまとめればいいと思うんです。

(注:そう思っていた矢先に全国の市民測定所が計測してきた食品や土壌の汚染状況をまとめた本がクラウドファンディングで出版されました。その支援総額や発行部数は予想以上で、想像していた以上の人達がこのことに関心を持っているということもわかりました。)

この本(スウェーデンの本)には「最初は慌てふためいてパニックになってグルグルでした。でも、いろいろやって、ようやくわかってきたんですけど、トナカイは結構草を食べてしまって被ばくしてしまうので、下草を食べさせるのはやめたほうがいいですよ」というようなことが、あらゆる分野に渡って書いてあります。

これは一つの例ですが、他にもあとからわかったことがたくさんあるんです。

日本では、1年目、2年目から「放射能のことは気にするな」という人たちが福島県内だけでなく、各地で活躍していて「気にするとお前を孤立させるぞ」というような怖いことを言うので「じゃあ測るのもやめた」といった流れになってしまっているんですが、今測定しなくてどうするんでしょう。

いろいろと測り続けていればわかることがあります。

秋、鹿が一番草を食べるとき、鹿肉はやばいとか。

ストロンチウムは骨に溜まりやすいとか。

こういうことはわかっていたら便利だけど、わからないなら自分たちで調べるしかありません。


僕は、市民測定所をとてもリスペクトしています。

それは「政府がやらないなら、やめる」ではなく「自分たちでやろう」と自ら動いているからです。

茨城の常総生協は、食品の測定をしまくっているし、自分たちなりの基準値も設けています。

政府が測らないなら自分で測る。

政府の安全基準値がおかしいと思うなら、自分たちで基準値を作る。

そういう積み重ねが大事だと思います。

スウェーデン政府は、チェルノブイリ原発事故を最初に見つけた国です。

ロシアは大事故を起こしたにも関わらず、当初隠していました。

スウェーデンのとある原発のサイト内で空間線量が上がっている。

(注:フォルスマルク原発。チェルノブイリ原発から1100キロ離れている。)


何か起きているに違いないと思って、原子炉を停止してみても、空間線量は下がらない。

国内では何も起きていないらしい。

どこかで何か起きていませんかと呼びかけたら、ロシア(旧ソビエト)政府がようやく認めた。


そういう流れだったので、スウェーデンは最初からこの原発事故に対して主体的に動けたのです。

あと、ベラルーシに辰巳雅子さんという女性がいて、ベルラド放射能安全研究所が発行した書籍の日本語訳などをされています。

彼女は福島第一原発事故前から動いていて、いろんなレポートを日本語に訳す仕事をしています。

その辰巳さんと京都大学原子炉実験所の今中哲二さんが翻訳した本が「自分と子どもを放射能から守るには(日本語版特別編集)」です。






ベラルーシ放射能測定所でわかってきたこと、例えば、どういう食品が体に移行しやすいとか、どういう食べ物に気を付けたほうがよいかなど。

さらに、食物連鎖によって濃縮することもここに書かれています。


例えば木の実、タケノコなどがそうです。

日本でも気にしている人はすでにどういうものが汚染されているかを知っていますが、怖がり過ぎて、怖がる対象を見ていない人ほどうっかり食べてしまいます。


本当にしっかりと見ていれば、見えてきます。

農業をしていて、カリウムを吸う野菜は蓄積しやすいとか。

解毒作用のあるヨモギやローズマリーなど、環境中の有害物質を吸い込んだり、人間の体に入っても毒素を吸い取ってくれるような薬草も相当被ばくします。

「風の谷のナウシカ」に登場する「腐海の森」と同じです。

人類がばらまいた汚染物質を吸着してくれるヨモギやドクダミなどの植物は放射性物質をすごく吸っています。


▪️極陰性=被ばくの実感


では、果たして放射性物質を吸っているヨモギやドクダミは摂ってはいけないのか、それとも体内の毒素を吸着してもらうために摂ったほうがいいのか。

そこは、意見が明確に分かれています。

分かれていいと思います。

それぞれが自分なりの立場と考えと実感から、その時々で選択をしていけばいいと思います。

「誰かがそう言っているから」という形で判断したり、人の基準値を鵜呑みにして自分なりの基準値を設けるのはおすすめできません。

ちなみに「セシウムが移行しているとおぼしきものは何ベクレルかにかかわらず、摂らない」が僕のスタンスです。

具体的には1Bq/kgあったら摂りません。

なぜ摂らないのか。

ひとつは「まあここまではいいか」という妥協をしたという意識そのものが、放射能や原発稼働への警戒心をゆるめたり、誰かに何かを真摯に伝えようというときに「まあ(伝えなくても)いいか」となってしまったりする原因(なにかにつけて妥協する原因)になるということを痛感しているからです。

そして、自分自身の感覚の中に「被ばくの実感」があるかどうかも、大きいかもしれません。

僕は、低線量被ばくの急性症状が出るのではなく、だんだんだるくなるようなことを、何度も実際に体験しています。

原発事故後も、ある場所にいくと原稿を書く気になれないし、朝起きられない。

面倒くさくなる。

そういうことが何度かありました。

場所は言いません。

でもそこの空間線量も土壌の線量も、ウクライナ、ベラルーシでいえば「移住権利区域」のそれと一緒です。

さらにガイガーカウンターで雨どいの下などを測ると「移住義務区域」のそれと一緒でした。

もちろん他の要因が考えられないわけではないけれど、ガイガーカウンターで測定すると明確に高い。

そんな場所に滞在していて、自分のメンタル、フィジカルの状態がどんどん下がっていくのを感じました。

あぁ、この症状は、消去法でいろいろ見ていっても、被ばくしか考えられないなと、実感しました。

その体験があってから、さらにセシウムについて勉強し始めました。

だるくなる、面倒くさくなる、人まかせにしたくなるというのは、いわゆる陰性体質です。

甘えん坊になります。

昔は、それを「原爆ぶらぶら病」と言っていました。

今はこの言葉は差別用語とされていて「原爆症」としか言えないけど。

横になりたい、座りたい、眠い、むくむ、座りたい、内臓が下に下がる、人にすがりたくなる、人に甘えたくなる、自分でやる気が起きないなど。

それは、自分に根本的にエネルギーが足りないからです。

他にも、フワフワと妄想ばかりしてしまう。

広島の肥田舜太郎先生が臨床していると、とにかくそういう患者が多かったそうです。

1時間くらい面談していると、「私座っていられないので、横になって話を聞いてもいいですか」と言う患者が多かったそうです。

それは、電磁波や白砂糖なども同じです。

白砂糖に限らず、甘いものが多いと体はすごく酸化します。

化学物質、抗生物質、糖分、電磁波、多めのたんぱく質や油、残留農薬など。

それで血液が酸化すると、機能が低下して、だるい、むくむなど陰性体質になり、下痢とか便秘になります。

それは気づきにくいです。

けれど、僕は日ごろから陰陽五行や断食で自分の体を見ていたので、なんか入っているなぁと感じました。

学生時代によく飲んでいた安い焼酎「トライアングル」を飲んだ翌日の感じだと。

そして、これは絶対に被ばくだと思いました。

そこで、鉄火味噌や梅干しをそれまで以上に摂るようにして、それで復活しました。

やっぱりそうだったんだと。

対処をしてみて、その結果を受けてさらによくわかりました。

極陰性は、緩みやすい、だるい、たるむ、冷える、甘えん坊になるなどの陰性が行き過ぎている状態。

そういうときに、引きしまっているもの、長く火を入れているもの、長期熟成させたものなどを摂ってシャキッとした、バランスがとれたということは、やはり極陰性のものを摂っていたということがわかりました。

被ばくを実感して、「これはたまらない」と思いました。

これが続いていけば必ず内臓に影響が出ると思ったし、遺伝子を傷つけるだけのパワーがあると思いました。

僕の遺伝子は影響が出かねないと今も思っています。

僕は本当に、身にしみたんです。

理屈ではないんです。

そしてそういうことを体験してみて、体験していない人にはわからないかもしれないなとも思いました。

それはとても寂しいことですが、でもそう思ってしまいました。

だから今も、今ピンと来てない人までふくめて、やたらとみんなを分からせようとするという必要はないと思っています。

それはとても疲れることですし。

そしてそれよりもしたいことは、今、自分と同じように「肌身に感じている人」と「どうやって生きていくか」に一緒に向き合っていくことです。

広めるという行為は、もっともっと先の話だと思っています。

それよりも、自分で体感していることにちゃんと向き合っていけば、すでに実践している人に出逢えます。

自分が実践するから出逢えるんです。

これらの本を初めて見る人も多いかもしれないけれど、向き合うと決めたら、出逢えます。

みなさんも今出会っています。

そしていつか、日本に住む僕たちが、ベラルーシやスウェーデン、ウクライナの市民たちと組んで色々やっていけるという話にもなっていくのではないでしょうか。

自分が絶望としっかりと向き合うと、すでに絶望と向き合っていた先輩と出逢えるのです。 

「すごいっすね。もう26年前から始めていたんでしょ。超孤立もしていたんでしょ。バッシングもされていたし。それなのにずっと続けていてくれたんですね。僕なんかよりも孤立していたんだね」って。

日本にもたくさんいます。


(続く)


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