被ばくの影響を軽減するための具体的な提案
◎人工放射性物質の影響
ウランが核分裂することで、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などの人 工放射性物質が生まれます。
これらの物質は、体内に取り込まれると、体液や内臓の中で、強いエネルギー線を放ち続けます。
物質が放つエネルギー線を測る単位は、ev(エレクトロンボルト)といいます。
人体を構成する物質の放つエネルギー線は、0.25ev~7.9evです。
それに対して、セシウム137の放つエネルギーは、約66万evです。
ヨウ素131も、ストロンチウム90も、体内の分子の10万~100万倍の強いエネル ギー線を放っています。
体内に取り込まれた人工放射性物質は、強い放射線を放ち、遺伝子の鎖であるDNAを切断していきます。
切断されたDNAは、修復されなければ死滅します。
死滅する細胞が大量になると、感染症や下痢、下血などの急性症状が起こります。
さらに、切断されたDNAは、間違った形でつなぎ直されることがあります。
これを、DNAの異常再結合といいます。
DNAの異常再結合によって、不具合を持った細胞が増えると、癌や白血病、白内障などの病気が発生する原因になります。
また、体内に取り込まれた放射性物質は、血液やリンパ液、体液の中に含まれる水分子に放射線を当てることで、活性酸素を生み出します。
活性酸素が増えることで、その周囲は急速に酸化していきます。
酸化が促されることによって、細胞の異常再結合による影響も、増えていきます。
◎被ばくによっておこるフリーラジカル
体内の分子を構成する陽子と中性子のまわりを、マイナスに帯電した自由電子がグルグル回っています。
この自由電子が、放射線に打たれることで、どこかに飛んでいってしまいます。
そうやって調和状態が崩れた分子が、どんどん増えていきます。
放射性物質が体内にあるということは、放射線に打たれる分子が増えるということ。
打たれて電位が不安定になった分子が増える状態を「フリーラジカル状態」といいます。
◎活性酸素と酸化
不安定な物質が増えるフリーラジカル状態になると、体内で電子の奪い合いが起こります。
その過程で活性酸素が急速に増えていきます。
活性酸素は、「活性」という言葉が付いているので「元気そう」というイメージも湧きますが、この活性酸素は、不安定だから活性しているのです。
活性酸素は、急速にまわりを酸化させていきます。
放射性物質が体内に入り込む
⇩
電位の不安定な分子が増える
⇩
活性酸素が増える
⇩
酸化が促進される
ということです。
◎酸化とDNAの異常再結合
酸化は、疲れや老化、免疫力の低下を促します。
細胞が疲れていくと、細胞膜が弱ります。
体内環境の酸化が促進されると、細胞膜が弱り、細胞内に放射性物質が入り込みやすくなります。
細胞内に入ってきた放射性物質が、細胞核に放射線を当てると、DNAが損傷します。
DNAは損傷してから修復をしようとします。
しかし、その修復がうまくいかないことがあります。
そのことをDNAの異常再結合といいます。
異常再結合を起こしたDNAが増えることで、エラーのある細胞が増えます。
その一部が悪性腫瘍の原因になります。
酸化が促進される
⇩
DNAが損傷しやすくなる
⇩
DNAの異常再結合が起こりやすくなる
ということです。
◎非定型症候群
放射性物質を体内に取り込んだ影響は「非定型症候群」と呼ばれています。
被ばくの影響は、食生活のありかた、体の使い方、ライフスタイル、体質などと結びついて、多様な症状として現れてきます。
日本で最も多くの被ばく者を診療してきたと言われる、故・肥田舜太郎さんが著書『内部被曝の脅威』の中で、被ばくによる「非定型症候群」に関する報告書を紹介しています。
『広島・長崎の原爆被害とその後遺ー国連事務総長への報告』
1 被爆前は全く健康で病気ひとつしたことがなかったのに、被爆後はいろいろな病気が重なり、今でもいくつかの内臓系慢性疾患を合併した状態で、わずかなストレスによっても症状の増悪を現わす人びとがある
(中・高年齢層に多い。)
2 簡単な一般検診では異常が発見されないが、体力・抵抗力が弱くて「疲れやすい」「身体がだるい」「根気がない」などの訴えがつづき、人なみに働けないためにまともな職業につけず、家事も十分にやってゆけない人びとがある
(若年者・中年者が多い。)
3 平素、意識してストレスを避けている間は症状が固定しているが、何らかの原 因で一度症状が増悪に転ずると、回復しない人びとがある。
4 病気にかかりやすく、かかると重症化する率が高い人びとがある。
◎カクテル効果
チェルノブイリ原発事故の後、近隣の住民の中に各国政府から、ある勧告が出ました。
それは「被ばくしている状態で白砂糖を取ることで、放射線の影響が促進されるの で、控えるように」というものでした。
精白され、ミネラルの抜かれた白砂糖は、体内で活性酸素を生みだします。
体の酸化を促す力が強い白砂糖と人工放射性物質とを、同時に摂取することで、その影響は飛躍的に増していきます。
人工甘味料、抗生物質、食品添加物、化学物質、人工油脂、残留農薬も、体内に取り込まれると大量の活性酸素を生みだしていきます。
これらの物質を、放射性物質を組み合わせて摂取すると、体内の酸化はさらに促進されていきます。
このような効果を「カクテル効果」と呼びます。
2000回以上に及ぶ大気圏核実験や、原発事故、そして日常的にウランが採掘され、 運搬、加工、利用される中で、私たちは、以前より人工放射性物質をを摂取しています。
そのような状況の中で、さらに白砂糖、化学物質、抗生物質を摂取していたら、血液はよりいっそう酸化していきます。
免疫力は低下し、体は冷えやすく、疲れやすく、病気にかかりやすく、かかったら治りにくい体質になる可能性があります。
放射性物質を体内に取り込まないことはとても大切。
そして同時に、体を酸化させないことはとても大切。
さらに「カクテル効果」という言葉を意識することも大切です。
カクテル効果とは「放射線と同じように身体の酸化を促すようなものを合わせて摂ると、それぞれの効果が掛け合わさっていく」ということです。
放射線と同じように身体の酸化を促すものの例:
・電磁波
・トランス脂肪酸
・抗生物質
・精製食品(ミネラルや食物繊維の含まれないもの)
・ネオニコチノイド系の農薬
・ストレス
・自律神経の乱れ
・腸の冷え
など
これらを、セシウムやストロンチウムと合わせて摂らないように、ということです。
◎酵素を活かすライフスタイル
92歳まで患者を見続け、100歳で亡くなった肥田舜太郎氏は生前、被ばく対策として「よく噛むこと」を勧め続けました。
肥田先生は、ご飯の食べ方の重要性も指摘されました。
一番大事なのは、ゆっくり噛むことだ、と言うのです。
噛むことでたっぷりと唾液を出して、それを一緒に胃の中に送り込む。
それが身体によいのですが、よく噛むと必然的に食べ過ぎなくもなります。
ー「原発からの命の守り方」(著:守田敏也)より
食べたものは、唾液、胃液、膵液、腸液といった消化液に含まれる、消化酵素によって分解、消化されます。
そして、破壊された細胞の修復、体にとって不要な物質の排出や解毒、酸化の還元 といった「体を作る」とか「体のバランスを整える」働きをするのは、代謝酵素です。
この消化酵素と代謝酵素をあわせて、体内酵素といいます。
ひとつひとつの酵素の働きはそれぞれ違っていて、体内では数千~数万種類の酵素 が働いています。
体内酵素は、毎日、体内の細胞の中で作られる。 そして、体内酵素の作られる量は決められています。
消化に負担がかかる暮らしをしていると、消化酵素を多く作る必要が出てくるため、 体を作ることや体のバランスを整えることに使う代謝酵素が減ってしまいます。
よく噛むことや、食べすぎないことによって、消化に負担がかからない暮らしをしていると、細胞の修復や、酸化の還元、骨や筋肉を作るといった働きのための代謝酵素を多く作ることができるようになるのです。
また、白砂糖、抗生物質、化学物質、人工油脂、残留農薬などを体外に排出する働きも、体内酵素によるものです。
これらの物質を取り込めば取り込むほど、限られた数の体内酵素たちが、これらの仕事に専念せざるを得なくなり、骨や肉を作ることや、酸化を還元することなどの仕事ができなくなります。
そして、その結果として、疲れやすい体になったり、癌化した細胞が増殖しやすくなってしまいます。
また、体内酵素は主に、寝ている間に作られるので、よく寝ること、も大事な養生法になります。
◎食べものから酵素を補う
生野菜や野草や果物、味噌や醤油や漬物といった発酵食品の中にも酵素が含まれています。
これらの酵素たちは、体内に取り込まれると、消化酵素の働きを助けます。
食べたものを腸内で分解したり、不要な物質を解毒・排出したり、酸化を還元します。
チェルノブイリ原発事故後、周辺に住む子どもたちの健康を回復するためのプログ ラムとして、野菜や果物のジュースを飲ませたり、日本からの支援物資として味噌 や梅干しが送られ続けています。
◎酵素を活かすポイント
・消化、代謝をしているのは体内酵素。
・体内酵素は、毎日作られる量が決まっている。
・代謝酵素は、骨を作る、肉を作る、酸化還元する、不要物の解毒分解などをする
・体内に不要物を取り込むことで、代謝酵素の仕事が増えてしまう。
・白砂糖、抗生物質、化学物質、残留農薬といった酸化を促す物質を摂らないこと。
・酵素の仕事を増やさず、よく噛んだり、よく寝ることで、酵素の仕事を助ける。
・生野菜や野草や果物、味噌や醤油や漬物といった発酵食品の中に含まれる酵素を取り入れる。
◎チェルノブイリ原発事故と腸のこと
チェルノブイリ原発事故の直後、ロシア政府の要請で半年間現地に滞在したバーナー ド・ジェンセンという医師は、原発事故の収束作業員を中心に、被ばく者たちの解 毒や免疫向上に貢献し、多くの命を救ったといわれています。
そして、彼の師であるイギリス国王の元専属医であるアーバスノット・レインは、 腸の状態を整えることが健康の秘訣だと語っています。
すべての病気の原因はミネラルやビタミンなど特定の食物成分や繊維質の不足、または自然の防御菌(善玉菌)の叢(フローラ)など体の正常な活動に必要な防御物の不足から発生している。
そうした事態になると悪玉菌が大腸に侵入し繁殖する。
それによって生じた毒は血液を汚染し、体のすべての組織、腺、器官を徐々にむしばみ破壊してゆく。
-アーバスノット・レイン
長生きの人たちは主として自然の野菜や果物など、加工されていない食物を食べ、揚げ物や肉は少量にし、規則正しい生活と適度の運動(労働)をし、明るく静かな満ち足りた気持ちで暮らしている。
腸が機能不全に陥れば、体の他の器官にも必ず伝染する。 これが、腸から始まる病気のドミノ現象なのです。
-バーナード・ジェンセン
腸内に広がる、100兆以上の微生物達が腸壁に住まう様子は「腸内フローラ(フローラ=叢、くさむら)」と名付られています。
人間を樹木に例えると、光合成によってガス交換を行っている葉は肺にあたります。
木の幹は、骨や筋肉にあたります。
そして、木の根にあたるのは、腸です。
根は地中深くに張り巡らされ、そこにある栄養吸収細胞が、土から栄養や水分を吸収しています。
人間の栄養吸収細胞は、腸にある300万本ほどの絨毛に存在している。 腸内に住む微生物たちは、腸内に入ってくる成分を分解・消化・吸収したり、不要なものを排泄することを助けています。
昔、日本では腸を「肚」と呼んでいました。
肚=月+土。
肚は体の土。
肚の働きを助けること。
肚に負担をかけないこと。
肚の喜ぶものを食べること。
消化を助ける、酵素を摂ること。
腸内に運ばれた食べ物が、分解・消化され、吸収され、エネルギーに転換される働きを助けているのは、体内に住む腸内細菌です。
そして、野菜や野草や果物や、味噌や醤油や漬物の中に含まれる微生物たちが、そ の仕事を助けています。
これら微生物たちの持つ酵素がおこなう様々な化学反応によって、栄養やエネルギー が作られ、運ばれ、利用され、体調が整えられているのです。
◎腸内細菌が喜ぶ、ミネラルと食物繊維のはたらき
微生物たちの持つ酵素が働くために必要なもののひとつが、ミネラルです。
ミネラルはいわば、微小鉱物。
岩や石の中にふくまれるさまざまな成分が、雨水や地下水に削られ、運ばれ、溶け込んでいます。
天然のミネラルは、自然塩や自然塩を使った天然発酵食品の中に含まれています。
それはたとえば、梅干し、味噌、醤油、漬物などです。
また、海で育った天然の海藻、小魚の中にもミネラルが多分に含まれています。
そして、腸内細菌の餌として重宝されるのが、食物繊維です。
全粒穀物や野菜や野草や果物や海藻、醤油や味噌や漬物の中に含まれる食物繊維は、 腸内細菌にとってのご馳走です。
体に負担をかける食品を摂ることをやめて、天然のミネラル、食物繊維が多く含ま れる食品を摂ることで、放射性物質を排出したり、放射性物質の影響で起こる酸化 や異常再結合の影響を軽減する力が高めることができます。
◎原爆と味噌
長崎に原爆が投下された直後から、治療と救護に尽力した聖フランシスコ病院の秋月辰一郎医師が、著書の中でこのように書いています。
昭和20年8月9日の原子爆弾は長崎市内を大半灰燼にし、数万の人々を殺した。
爆心地より1.8メートルの私の病院は死の灰の中に、廃墟として残った。
私と私の病院の仲間は、焼け出された患者を治療しながら働き続けた。
私たちの病院は、長崎市の味噌・醤油の倉庫にもなっていた。
玄米と味噌は豊富であった。
さらにわかめもたくさん保存していたのである。
その時私といっしょに、患者の救助、付近の人びとの治療に当たった従業員に、いわゆる原爆症が出ないのは、その原因の一つは、「わかめの味噌汁」であったと私は確信している。
放射能の害を、わかめの味噌汁がどうして防ぐのかそんな力が味噌汁にどうしてあるのか。
私は科学的にその力があると信じている。
ー「体質と食物」(著:秋月辰一郎)より
◎被ばくの影響を軽減するための具体的な提案
ここまで書いてきたことを踏まえて、具体的な提案を挙げていきます。
1 放射性物質をとらないこと
1−1、測る
全国各地に市民測定所があります。
一度そういった測定所を訪ねると、各地の汚染の傾向や、セシウムが移行しやすい食品の例など、色々な情報に出会うことができます。
1−2、汚染の傾向を掴む
土地ごとの汚染の傾向・・・汚染は同心円状に広がっていない。
食品ごとの汚染の傾向・・・移行しやすさには食品によって違いがある。
全国の市民測定所が連携してデータ集を出しています。
ちだいさんの「食べる?」という本があります。
1ー3、自分なりの基準値を持ち、その数値に疑問を持ち続ける。
誰であっても、食べるならゼロベクレルがいいに決まっています。
しかし2000回以上の大気圏核実験などの影響で北半球のあらゆる食品は少なからず汚染されています。
その中で、自分なりの基準を持つこと。
各国政府の基準、防護団体、生協、研究者などによる基準。
その数値に正解はありません。
自分なりに向き合って、基準を持ちながら、葛藤を続けることで「意識を持ち続ける」状態を維持できます。
意識を持ち続けることで、被ばくの根本的な原因になっている戦争経済や、原発政策を変えていくためのモチベーションを保つことができるのではないかと思います。
2 出すこと
取り込んだ放射性物質の解毒、分解、排泄、代謝。
身体の力を落とさないように。
身体の力を高められるように。
内蔵の働きを理解して、支えていく。
3 酸化を還元すること
抗酸化ミネラル。
ナッツ、海藻、全粒穀物、みそ、醤油、自然塩に含まれている。
クエン酸。
クエン酸サイクルを回すことで酸化を防ぐ。
アミノ酸。
アミノ酸が、身体の中で抗酸化酵素を作ることを助ける。
4 酵素の働きを助けること
4ー1 酵素のこと
・体内酵素のこと
体内の細胞が毎日酵素をつくっている。
ライフスタイルによって、消化酵素多めとか、代謝酵素多めという感じで、どんな酵素を作るかを毎日決めている。
・消化酵素と代謝酵素
代謝酵素は消化以外の、あらゆる体内活動をしている。
酵素による化学反応が、生命活動の実態。
・酵素の働きやすい環境をつくること
よくねる・・・寝ている時に多くの酵素をつくる。
よくかむ・・・唾液酵素による消化。噛むことで分解が容易になる。
・酵素の働きを阻害しないこと
食べ過ぎない 消化酵素を使いすぎないこと
・酵素の働きを阻害するもの
トランス脂肪酸
抗生物質
精製食品
電磁波
ストレス
自律神経の乱れ
これらが活性酸素を増やすと、体内酵素の仕事が増える。
活性酸素の排泄の仕事が増えて、血をつくる、血をきれいにする、などの大事な仕事をする暇がなくなる。
4ー2 腸のこと
消化酵素を使いすぎないこと=腸の働きを助けること
・腸をあたためる
生姜湿布、蒟蒻湿布、梅醤番茶、みそ汁、足湯、腰湯、足裏マッサージ
・腸をやすませる
プチ断食、玄米甘酒
・腸に負担の少ない食事にする
一汁一菜
・食物繊維は腸内細菌の餌になる!
・事前消化を促すもの
漬物、みそ、醤油、甘酒
4ー4 体外酵素の助けを借りる
・腸内細菌の酵素
腸内細菌が助けてくれている。
彼らの餌のひとつは食物繊維。
ミネラルが必要。
酵素はミネラルと組んで、働ける。
いいミネラルを摂る。
・食物の酵素
生野菜 大根おろし、自然薯、玉ねぎ、長ネギ、野草
発酵食 つけもの、みそ、しょうゆ