2018年7月20日金曜日

夏の土用をたしなむ:その弐〜梅干しのススメ〜

今年の夏はとにかく暑いっすね。

そして、年々デスクワーク中心のライフスタイルが広がり、冷房や冷たい飲みものの影響で腸内の冷えが深刻化しているように思える現代の土用は、今まで以上に養生が必要と感じます。

ということで、土用の話が続きます。


■夏の土用は、養生の要 

夏の終わりは、暑さと湿気の極まる時期で、この頃の約18日間は「夏の土用」です。



夏の土用は、一年の中で最も暑さ極まる「大暑」の頃。

古くは一年の中でもとりわけ気が乱れやすい「裏鬼門」の時期とも言われてきました。

この時期は水分のとり過ぎによる消化器官の冷えやむくみ、胃腸の疲れによる食欲不振や消化力の低下が起こりがちです。

そして、それら諸症状に伴う持久力の低下、体力の消耗、長引く風邪や微熱、だるさなどの出やすい時期でもあります。

さらに夏は、自然界のエネルギーが高く、不摂生してもなんとかなるだろうと、養生不足になりがちな季節でもあります。

そのツケが土用明けにどっと出てきて、夏バテになりやすいとも言われています。

東洋医学において胃腸の力、消化力はそのまま気の力に直結すると考えられています。

消化力が下がることで体力そのものが低下する夏バテを防ぐためには「よく噛むこと」「素食にして腹八分目に控えること」などの基本に立ち帰り「消化器官を助けること」が肝要です。


■土用丑の日に「う」の付くものを、というキャンペーン


土用といえば「土用丑の日」と「鰻(うなぎ)」を連想する人は少なくないでしょう。

この「土用丑に鰻」という風習は、江戸時代の学者であり戯作者であった平賀源内が広めたものと言われています。

十二支の中の「丑」は方角で言うと北東の鬼門方向、一日の中で言うと夜明け前の最も闇が深い時、一年の中で言うと冬の終わりの寒さが極まる頃を表します。

当時、陰陽五行説を理解する人たちの中では「夏の”火の気”を抑制するためには、火と相対する”水の気”を用いるのがよい」とされ、五行において「水」にあたる色である”黒色”で水の中に棲んでいる鰻を食べると、夏の不調を克服できるとされてきました。

さらに古くは奈良時代から「夏痩せには、滋養の多い鰻を食するのがよい」とされていた歴史もあり、これらの事実を踏まえた源内は、売り上げが落ちてきた魚屋からの宣伝の依頼を受けて「それなら人びとが土用丑に鰻を食べるように宣伝を打てばいい」と考えて、町の魚屋に「土用の丑は鰻」と書かれたのぼりを立てさせたと言います。

また、源内の時代の前から「土用の丑の日は体をこわしやすいので健康に気をつけるように」という通説と共に「土用丑の日は”う”の字の付く食べ物を食べると良い」という俗信が根付いていた事もあって、うり、うめ、うどんと共に、うなぎを食べる慣習が広まっていったのでした。


■現代における夏の土用は、夏バテ予防キャンペーン

江戸時代の日本には冷蔵庫もクーラーもなかったので、内臓を冷やす心配はほとんどありませんでした。

さらにエレベーターもエスカレーターも自動車もありませんから、運動不足の心配もほとんどありませんでした。

現代の夏の土用は、内臓の冷えやそれに伴う水の滞り、むくみ、運動不足による血行不良やそれに伴う消化不良の心配がついて回ります。

体内で行われる消化も、体温や血圧を調整する代謝作用も、細胞や体内に住む微生物達が持つ酵素によって行われています。

内臓の冷えや運動不足によって、体温が下がったり、腸内の温度が下がると、これら体内酵素の働きも低下し、免疫力、消化力は低下していきます。

さらに高タンパクな食品や乳製品や食品添加物を摂れば、その分だけ身体への負担は大きくなっていきます。

鰻はあくまでも消化力の高い人の食べものと言ってもいいでしょう。

そして瓜は、塩を振らない状態で摂ると内臓が冷えすぎてしまう可能性があります。


■夏の土用は、
梅干し、梅酢、梅醤、梅肉エキスを! 


現代において、夏の土用に適した”う”の付くおすすめの食品は梅です。

梅、と言っても、青梅のことではありません。

梅を塩で漬け込んで天日に当てた梅干しや、梅干しを作る際に取れる梅酢、梅を長時間煮込んで作る梅肉エキス、梅干しと生姜と番茶と醤油を合わせて作る梅醤番茶などのことです。 









↑土鍋に螺旋状に梅干しを並べて、小麦粉などで蓋をしっかり密閉して、ごくごく弱火で10時間以上火を入れて、梅干しの黒焼きを作りました。耳かき一杯分で、胃腸病一切にてきめん効きます♪

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これらはすべて、体の酸化を防ぎ、疲れを取り去り、消化を助ける食べる薬と言っていいでしょう。


近年販売されている梅干の中の多くは、還元水飴や精製塩、はちみつ、酒精、調味料(アミノ酸等)、酸味料、甘味料(ステビアなど)、ビタミンB1、着色料、香料などが入ったものになっています。

本当の梅干とは、農薬を使わずに育てられた完熟の梅を自然塩で漬け込み、十分に土用干しして出来上がったものです。

梅干の薬効には、以下のようなものが挙げられます。



参考情報1「家庭の味 手作り食品ー健康は安全な食べものからー」(東城百合子/あなたと健康社)
より
下痢・胃腸病一切・公害物質を体外に排出したり老人性疾患として恐れられている動脈硬化、脳溢血、神経痛、リウマチなどを予防し、乳酸、酪酸などの血液の酸毒を中和、解毒してカルシウムの吸収を助けます。梅干は味は酸っぱいが優秀なアルカリ性食品で、丹精して干した梅干ほど効力は強くなり、血液の浄化力があります。又梅干は強力な殺菌力があり、ご飯に入れておけばいたみません。(中略)唾液腺ホルモン(パロチン)の代謝を活性化させる。これは若返りのホルモンで内臓筋肉を緊張させ老化を防ぐので、大切な老人病予防ホルモンです。風邪には梅干一個に熱い番茶をさして飲むと咳どめ、熱さまし、利尿剤になります。土鍋で黒焼きにすると一層よく効きます。 

参考情報2「梅の効能について」(三宅商店ブログより)



梅干は塩味と酸味が合わさっている事で、抗菌、殺菌力も高く、胃腸の腐敗による不調にてきめんの効果を持ちます。

また、毎朝に梅干を使った梅醤番茶を取ることで、冷え取りの体質改善も可能です。

食欲不振の際には、料理に梅肉や梅酢を使うと、唾液や消化液の分泌が促進され、食欲回復の助けにもなります。

水分補給には、梅酢を水やお茶で薄めたドリンクを水筒に入れておけば、胃腸の腐敗防止、栄養補給の効果も得ることが出来ます。

これら梅を使った養生食品は、土用の健康管理だけでなく、腸内環境を整えたり、冷え体質を治したり、体質そのものを改善する事ができる薬でもありますので、日常的に取り入れる事を勧めます。

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以下は友人の営む「三宅商店」のおすすめアイテムです。

・龍神|つぶれ梅|1kg




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夏の土用をきっかけに、ぜひ梅の力を取り入れてみてくださいね!