2015年8月24日月曜日

冨貴月報二十七年文月版

冨貴月報二十七年文月版をリリースしました。



以下のとおり、テキスト版も作っときました♪


冨貴月報
平成二十七年文月版

和暦 平成二十七年文月七日(七夕)
西暦 2015820
発行:冨貴工房
531-0071大阪市北区中津3-17-12
homepage │ http://fukikobo.blogspot.jp/
mail │ fukikobo@gmail.com


旅の果てに
20031月、4年間勤めてきたソニーミュージックを退社した時、僕はペルーのアマゾンに一人旅するつもりでいました。
その目的は植物の精霊と対話をしながらその薬効で人々を癒すメディスンマンに出会うためです。
そこからさらに2年さかのぼった頃、僕はヨガや禅との出会いを通じて本当の意味での仕事、「事に仕える」という意味での仕事を見失っている自分に気づき、それと同時に自分を生かしてくれている命(食べ物など)との関係を見つめ直しながら、薬草や穀物など植物の薬効が自分自身の心身を大きく変えていく事を実感していきました。
すこしずつ仕事と生活を見つめ直しながら、忙しい日常を一度止めて、あらためて命のつながり、自分の生き方を見つめ直すため退社を決意しました。

しかし、退社直後に友人たちと名古屋市内を歩くピースウォークを主催した事をきっかけに、ペルー行きは見送られる事になりました。
イラク情勢と連動した不穏な空気の中で何かアクションを起こしたいという仲間の声を聞き、ベトナム出身の僧侶ティク・ナット・ハンの著書「ウォーキング・メディテーション」の影響を受けていた僕は「自分たちが一歩一歩平和を歩んでいく」というメッセージを込めたウォークを提案しました。

そして、新聞記事を見てきたという小学生から戦前生まれの人たちまで、およそ500人ほどが集まったウォーク当日、それまで出会ったことのないたくさんの人たちとの出会いを通じて、世界中の様々な地域で起きている戦争のこと、原発のこと、世界情勢から身の回りで起きていることまでを一気に知る事になりました。そして「自分の旅はここから始まるんだな」という実感がこみ上げてきました。

その日を境に、一歩一歩の歩みの中で出会ったものを大事にすることから旅を始めようと思いなおし、ペルー行きの航空券を取ることはせず、浜岡原発や岐阜県瑞浪の核廃棄物最終処分研究所に足を運び、ウォークに参加してくださった人たちのもとを訪ねて戦争や憲法の事を学んでいく事を始めました。

それから3年、5年と年を重ね、沖縄の米軍基地や青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場、山口県上関の原発建設予定地を訪ねるようになりました。
しかしその頃には、暮らしを見つめ直す為に始めた旅が自分をずいぶん遠くまで運んで来てしまった事に対しての戸惑いと葛藤がどんどん大きくなっていきました。「この旅は一体どこに向かっているんだろう」という気持ちが高まる中で福島第一原発事故が起きました。
この時、解毒力や免疫力を高めることの出来るメディスンの存在を知っていながらそれを作る事に本腰を入れてこなかった事を深く悔やむ気持ちが溢れました。
そして、味噌や鉄火味噌、黒炒り玄米や梅干黒焼きを作って誰かに手渡す事が出来たとき、本当に自分がしたかったことを思い出したような感覚を覚えました。
今思うと、旅の中で出会った自給的な暮らしを営む人たち、植物の効能を深く理解し生活に取り入れる人たちからのひとつひとつのメッセージが、養生と手仕事を実践するためのスイッチを入れてくれたのだとあらためて実感します。

旅の中で感じた悩みや葛藤は、工房を始めた今も消える事はありません。
しかし今あらためて思うのは、悩み葛藤する思いの奥には、深く何かを願う気持ちが存在していて、その気持ちを見つけては応じるようにしていく事で、小さくとも確かな「生きる喜び」のようなものを感じる事が出来るという事です。
生きることの喜び。その小さな種は心の中に、湧き出る感情の泉の源に、確かに存在しているように思います。
その種を育む事を、水をあげるように、植物を慈しむように、続けていけたらとあらためて思う今日この頃です。

あらためて茜について
僕が茜染めに出会ったのは、2008年。
仙台でシュタイナー教育を取り入れた託児、幼児教育の場「仙台ゆんた」で茜染め体験会に参加したことがきっかけです。
仙台ゆんたを営む虹乃美樹子さんから「茜の色は胎児がお腹の中で見ていた、地球に降りて始めて触れる色。茜で染めたシーツやカーテンに包まれていると子供たちは胎内にいるような安心感を味わう事が出来る」という言葉を聞きました。
そして実際に染めてみて、自分の心に生まれる安らぎを確かに実感し、さらに衣服を薬として捉えるあり方に大きな影響を受けました。
その後、様々な場面で茜染めに出会い「メディスンと共にある暮らし」を望んでいた僕は、自分なりの探求と実践を続けながら、工房を立ち上げてからも「染めに関してはまず茜染めに専念する」という事を心に決めました。

僕は、ひとつひとつのメディスン、怪しい表現かもしれませんが植物の精霊と対話する中で、十分なメッセージを受け取るには相当の時間を要すると感じていますし、なるべくたくさんの時間をかけて向き合いたいと思っています。
「草木染めを暮らしの中で実践するあり方」を考えると、正直に言えばインド茜を輸入するのではなく身の回りに存在している草木を使って染めるのがまっとうだと思っていますし、そのことで悩んだり葛藤することも少なくありません。
しかし今は、縁あって出会ったメディスンとの対話をそっちのけに「正しさ」を根拠に仕事をするのではなく、矛盾を感じながらも真摯にインド茜と向き合う仕事を探求し続けたいとも思っています。

血を整える漢方薬としても重宝される茜は、放射能汚染が広がる世界の中で多くの人達に喜ばれるメディスンであると感じます。
そしてもう一つ、この日本列島の歴史を振り返ってみた時に、それぞれの生活を支える衣食住がその地域の中にある植物によって支えられていただけでなく、世界中から潮に乗ってやってくるメディスンを柔軟に取り入れる事によって成り立っていたという事を思います。
オーストラリアやアフリカ、アメリカやカザフスタンから運ばれてきたウラン由来の放射性物質の影響から命を守るために、日本列島以外からやってくる植物の助けを借りる事も自然な事なのではないかとも思っています。

残念ながら、平安時代にはすでに廃れ始めてしまった日本の茜染め文化。
その影響で、現在も茜の自生している地域はあるものの、栽培をしている地域はほとんどありません。
お米や麦や大豆と同様、私たちの生活の中に取り入れるにあたっては自生したものを採取するだけでなく栽培を手がける事が必要だと思います。
という事で、まずは自分の手で茜を種から栽培する事を通じて、茜とのつながりをさらに深いものにしていきたいですし、思いを同じくする人達と助け合って共同の茜畑を持てたらと思っています。そして、インド茜に関してはなるべく早くインドのファームを訪ねて、栽培の現場に触れ、直接仕入れる事が出来るようになれればと思っています。

僕は工房において、茜染めをしているようで茜に染められているような、茜に導かれているような気持ちを抱きながら仕事をしています。
自分の意志だけではない何かに動かされている感覚をそのままに、茜を前にして生まれる心の動きもそのままに、胎内にいるような安らぎを大切に育んでいきたいと思います。


冨貴工房 イベント情報

830日 『冨貴工房マルシェ』
10時~17
出店者
タメル(ヘンプショップ)自然本舗(三年番茶)鳴海姫子(着物)
Sweetspice NANAE
(食べ物)アルコバレーノ 八寿絵(Yasue)
Raw8Cafe(ローフード)Kayoko Japan(フォトカードなど)
響き愛∞まか∞(投げ銭ミニライブ)たあさん(カードリーディング)
天然酵母パン Pirate Utopia手網自家焙煎o-coffeeかぼちゃ企画(カードリーディング)
むすび食堂(食べ物)  ほか



831日 『麦味噌作りと利き味噌体験』
13時~16時 / 19時~22時 
参加費:4500円(味噌2キロ持ち帰り) 
定員:各10名 ※昼の部は定員に達しました。
無農薬大豆、天然釜炊き塩、麻の実、麻炭を入れた冨貴工房初の麦味噌作り
利き味噌では約10種類の天然味噌を味わっていただけます。
2キロ以上持ち帰り希望の方は1キロ1500円で追加が可能です事前にご連絡ください。



928日 『十字の漢方・十字鍼灸院院長によるお灸ワークショップと胡参塩作り』
11時~16
講師:大成功晃太郎(十字の漢方代表/十字鍼灸院院長)
定員:10名 
参加費:4500円(胡参塩付) 
大好評の健康実践ワークショップです。今回はひとりひとりの相談に応じるわかりやすい健康実践講座と、六年物朝鮮人参入りの養生胡麻塩(胡参塩)作りのみならず、生活の中に取り入れられるお灸ワークショップも行います。秋冬の体を健やかにしていくための智慧のつまったワークショップ、ぜひご参加ください。


104日 冨貴工房マルシェ
出店者大募集中です


1026日『伝統的手仕事、刺し子ワークショップ』
11時~16
参加費:3500円(養生ランチと炭焼き焙煎コーヒー付き) 
定員:各10
東北地方の伝統的手仕事、刺し子のワークショップです。青森県在住の刺し子作家であり、炭焼きを営む吉島康貴さんを招いてゆったりした時間を過ごしましょう。


冬の好日 『福島第一原発収束作業員に届ける鉄火味噌作り』
詳細は次号以降にご案内いたします。


126日 冨貴工房マルシェ
出店者大募集中です


お知らせ
以下の品物について、オーダーメイド販売を始めました。
・茜染め(麻褌、麻ストール、綿麻手拭いなど)
・麻炭染め(同上+竹布マスク)
お申し込み、お問い合わせは冨貴工房まで。


すべてのワークショップは事前に申し込みが必要です。
材料の手配などの都合上、直前のキャンセルはなるべくお控えください。


ご予約・お問い合わせ 
冨貴工房 
531-0071
大阪府大阪市北区中津3-17-12 
http://fukikobo.blogspot.jp/  
06-6372-7281 / 080-6947-2491(冨田)